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HUE-HEAT空調・照明連動制御の実証研究成果が国際科学誌“PLOS ONE”に掲載
■2016年9月末より3年半の間、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)リサーチコンプレックス事業『iBrain x ICT「超快適」スマート社会の創出』の一環として、けいはんな学研都市メタコンフォート・ラボにて行われていた《空調温度と照明色温度のシナジー効果を最大限に発揮させた空調・照明連動制御》の実証実験が完了し、その成果が、2020年8月、著名な国際科学誌“PLOS ONE”に掲載されました。
■室温と照明の色との相互作用は「HUE-HEAT効果」として多くの研究成果がありますが、「快適性と省エネ性を両立させた空調・照明連動制御」の事業化はあまり見ません。私共は、空調の重要なファクターである「室内温度と相対湿度」の制御のみならず、「照明の色温度」を連動させることで、オフィスの執務者に心理的影響を与え、「照明と空調のシナジー効果」で省エネと人の快適性を両立させる新たな「空調・照明連動制御」方法を確立しました。
■実は50年前の1972年、米国Human Factors誌でベネット、レイ両教授より「What’s so hot about Red?」が発表され、「HUE-HEAT効果」なるものが着目されました。これは色合い(Hue)が温冷感(Heat)に影響を与えるという理論なのですが、実際に暖色の電球色から寒色LEDの部屋に移すと、人は冷涼感を感じ、逆では温暖感を感じることが、各研究機関で確認されましたが、これまでそれを本格的に商品化させた企業がありません。それはその検証に対するヒト・モノ・カネの開発投資の大きさに二の足を踏んだものと推定しますが、3年前、ここに文科省の英断が大きな舞台を作りました。
■「世界に誇る地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス。以下RC)推進プログラム」は文科省所管の科学技術振興機構(JST)が仏国グルノーブル地域における研究開発を参考に、地域内の研究機関・企業・大学が連携して最先端の研究開発を行う拠点形成のために起ち上げたプログラムであり、各年10億円以上の特別予算を組み、全国の地域に対して公募を行いました。
けいはんな地域の頭記プロジェクトも幸いにして採択され、今回、その研究成果が、“PLOS ONE”に発表されました。以下の論文をご参照ください。
資料1:
“Effect of Illumination on Perceived Temperature”
執筆代表者:對馬淑亮(NICT:国立研究開発法人情報通信研究機構)
資料2:
上記抄訳「体感温度に対する照明の影響」
同志社大学 名誉教授 三木光範
■この研究論文は同志社大学、情報通信研究機構(NICT)、木村工機(株)が共同で実施した実験データを取り纏めたもので、主要な結果は以下の通りです。
実験設備:約30平米の部屋が3つ並んでおり、中央が待機室、両側が温度および照明環境が異なる2つの実験室である。冷房実験は実験室1の温度27℃を基準とし、1℃差の場合は実験室2の温度を26℃、2℃差の場合は25℃、3℃差の場合は24℃とした。また照明環境は照度800ルクス、色温度3000ケルビンの暖色系照明と、照度300ルクス、色温度5500ケルビンの寒色系照明とした。
実験結果:照明環境を暖色照明から寒色照明に変化させることで体感温度を2~3℃変化させることができることがわかった。この結果、夏の冷房時には寒色照明を用いることで涼しく、冬は暖色照明を用いることで暖かくすることができ、冷房温度を2℃上げ、暖房温度を2℃下げることで、省エネルギーに多大な貢献が可能である。
以上
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